窓ぎわ橙の見える席で
一重まぶたのあっさりした顔は、パッと見かっこよくもなんともないはずだった。なのに、どうしてなのか今はけっこういいかもしれないと思い始めている自分がいる。
笑うと目は無くなるし、清潔感も感じられないし、ボロボロの服を着ているのに。
それでも案外悪くないじゃない、と思うようになってしまった。
見慣れるって怖い。
ひとりで勝手にドキドキしていたら、辺見くんの薄い唇が動いて何かを言った。
「………………がいる」
「え?」
「あ、動かないで」
ガシッと両肩を掴まれて、向き合う格好になる。
いやいや、一体どんな状況なのよコレ。
キスされちゃうわけ?
あまりの急展開に動くということを完全に忘れてしまった私は、ただじっと身を固くすることしか出来なかった。
のろのろと彼の右手がゆっくり動き、肩から鎖骨を通ってその下へ移動する。
ちょっとくすぐったくて、ちょっと焦れるようなその動作にますます心臓が激しく鳴る。
「ちょ、ちょっと辺見くん。どこ触って……」
一応抗議を、と思って声を出したら「シッ」と見たこともない真剣な表情で制された。
黙るしかなくなった私は、もうどうにでもなれと目をつぶる。
サワッと右胸のあたりを触られた。
言いようのない妙な感覚を感じていたら、辺見くんの落ち着いた声が聞こえた。
「宮間さん。取れたよ」
「…………………………取れた?」
目を開けると、そこには。
体長5センチほどの羽のついた虫を持った辺見くんの姿。
頭の中が真っ白になった。