窓ぎわ橙の見える席で
私たちの住む町から、ファッションビルなどが多く立ち並ぶ一番大きな駅周辺までは車で20分から30分ほどかかる。
もっと近くに食品や雑貨や服などがリーズナブルな値段で売っているショッピングモールもあるけれど、どちらかというと高年齢層向けの服屋が多いので、今日は駅まで行くことにした。
海や緑の多い町を出ると、一気に都会感が増す。
そうそう、この間行った焼きそば専門店もその駅周辺にあるのだ。
同窓会が開催されるパレスロイヤルホテルもその通りだ。
「先になんか腹ごしらえでもする?」
お腹が空いているのか、腹部をさすりながら訴えるような目で見てくる辺見くん。
私はそれを華麗にスルーしてやろうかとも思ったけれど、どうせ彼のことだから朝食など摂っていないのだろう。
「じゃあどこか入ろっか」
……とは言ったものの。
この人のこんな服装では行けるお店は限られている。
ファミレスでいいか、と駅前のお店へ入ることにした。
車は南口のパーキングに停めたので、このあと買い物にも行きやすい。
よく料理を作る仕事をしているからか、友達なんかに「ファミレスになんて来る気しないでしょ?舌肥えてるもんね〜」とか言われるけども。
そんなことはない。
一流ホテルのレストランで働いていようが、ファミレスの品質の高さに驚いたりもするのだ。
濃いめの味付けが美味しいって思うこともあるし。
「僕はデミグラスハンバーグランチにしようかな。お肉は倍に増量して、ご飯も大盛りにしてもらおっと。宮間さんは?」
「……相変わらずよく食べるのね。私はチキンの和風ソースランチにする。ご飯は少盛りで」
「少盛り?もっとちゃんと食べなよ」
そう言いながら辺見くんは率先してウェイターを呼び止めて注文してくれた。
もっとちゃんと食べなよ、ってどの口が言ってるのかしらというツッコミはしないでおく。
彼に口で勝てる気がしない。