あの日、私は兄に誓う
夜風にあたって気持ちいい。

私と博明さんは並んで歩く。

「俺に言いたいことは無いのか?」ふと、博明さんはそんなことを言った。

言いたいこと?別に無いけどなぁ…。

いじめのことだって、ほんとは親の前でバラして欲しくなかったし…。

別に夜遊びとか、悪いことしてるつもりはないし…なんか言わないといけないことあったかなぁ…

私は必死で考えた。

「…あのね、相談?てか、私もよくわからないんだけど…聞いてくれる?」と私が言うと、嬉しそうに、博明さんは笑った。

近くの公園のベンチに私たちは座った。

「実はね、先輩とのことなんだけど…」と私が言うと、少し辛そうな顔をした。

「毎日一緒に過ごしててね、楽しいんだけど…たまに寂しくなるの。一緒に登下校してるのに無言とか…バイバイしちゃうとその後急に虚しく感じちゃったりとか…それってどーゆう感情何だろう?最近ずっと気になっちゃうし…」と私が言うと、

博明さんは笑って、優しく私の頭を撫でた。

そして、「それが…恋愛感情だよ」って教えてくれた。

えっ?てことは…私、先輩に恋してる?!

自覚無かったけど…そうなんだ…

なんか、嬉しいような複雑なような。

「お前だって高校生なんだから、そろそろ恋愛のひとつでもしていい年だろう?少し遅めの初恋だけどな」と博明さんは笑う。

けど…何だろう…この胸の締め付けられるような苦しさは…。

だって博明さん、ムリして笑ってるんだもん…。

「頑張んな。アイツも奥手そうだから、自分からアプローチしないと上手くいかないよ?応援はしてるから」と博明さんは言った。

「う、うん、ありがとう」と私は言った。

「さてと、送るよ。帰ろう…」と博明さんに言われて、ベンチを後にした、私と博明さん。

私は博明さんの腕をつかんで座らせる。

「ん?どした…?」と優しく聞いてくれる博明さん。

「博明さん、辛そうだったから…」と私が言うと、

「気使ってくれてありがとうな。けど…気にすんな」そう言うと、私を優しく抱き締めた。

「いつでも何でも相談しろよ?」と博明さんは言ってくれた。

涙が出そうになった。

「なんか…お兄ちゃんに似てきたよね…」と私が言うと、

「そうか?」と博明は言って私の頭をクシャクシャと撫でた。

「さてと、今度こそホントに帰ろう。送るから」そう博明さんは、言って改めて立ち上がった。

私も続いて立ち上がった。

先に歩き始めてしまう博明さん。

ほんとは横を歩いてほしい。だってこんな時間に物騒で怖いんだもん…。

って暴走族の総長が言う台詞じゃないんだけどね。

「待ってぇー」と私は言って博明さんの横まで言った。

そして、並んで歩いた。

家について、私たちは玄関で別れて中に入った。

お母さんは私を見るなり、「ちょっといい?」と声をかけてきた。

「…ねぇ、香は博明君のことどー思ってる?」って。

唐突にそんなこと聞いてくるもんだから、驚いて言葉に詰まってしまった。

「…どうって…大切な人だよ?」と私が言うと、

「そっか…けど、恋愛感情は無いのよね?」とお母さんはさらに言ってくる。

何なんだろう…?

「私は恋愛したこと無いからわからない…。けど、学校で気になってる人はいるの」と私は正直にお母さんに言った。

私の説明で何となく理解したお母さんは溜め息をつきながら、

「それは…恋愛ね…少し残念だけど応援するわ」と言った。

「進路について、考えてることはあるかしら?」とお母さんが聞いてきた。

「大学行きたいの…」と私が言うと、「そう頑張ってね!!」とお母さんは返してくれた。

「…もう遅いわ。寝なさい」とお母さんに言われて、私は自分の部屋に戻った。

結局お母さんが私に伝えたかったことがなんなのかよくわからなかった。

私はベットに横になる。そのまましばらくウトウトしてたんだけど…

シャワー入って寝よと思って、お風呂場に向かった。

シャワーを浴びながら一日を振り返った。

はああ、思わずため息が出た。

しばらくして、私はシャワーを出た。

自分の気持ちはどこに向いてるんだろう…。

髪を乾かし、自分の部屋に戻った私は、机の上に置いてあるお兄ちゃんの写真を見る。

真ん中に写る最高の笑顔のお兄ちゃん。

その回りには、永遠の人たちがずらっと並ぶ。

一番輝いてた…

「ねぇ、お兄ちゃん、私…先輩のこと、好きになってもいいよね?」と私はお兄ちゃんの写真に話しかけた。

答えなんて返ってこないはずなのに…。

けど…苦しそうな博明さんを見るのは辛い。

信都さんへの気持ちが恋と言うなら…博明さんへの気持ちは何なの?

何と説明するの?

わからないよ…お兄ちゃん…
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