あの日、私は兄に誓う
「ほら、早く飯食いに行こ?」と光に言われて私たちは、食堂に向かった。

「もしかして、気が乗らない?」と光は聞いてきた。

何でわかるんだろう…

軽く頷けば、そんな気がしたと笑われた。

「大丈夫!ちゃんと仲直りするつもりでいるんでしょ?」と言ってくれた。

その言葉でなんとか私は救われた気がする。

私たちが席を探していると、

「綾野さーん、こっちー」と呼ぶ声が聞こえた。

こんなにたくさん人がいるなかでもひときわ際立つこの声の主…

姿は見えにくいが、すぐに高見さん弟ってわかる。

私たちは声を頼りにそちらに向かう。

高見さんのとこにつくと、なぜか信都さんもいた。

「何でいるんですか…?」自分の声が震えているのがわかる。

光が私の肩を強く抱いてくれた。

「とりあえず、座って?俺、飯取りに行きたいから」と高見さん弟は言って、私は信都さんの向かい側に座った。

「光も飯取りに行くよな?」と高見さん弟は言う。

「あーはい。行きます」と言って、二人はご飯を取りに行ってしまった。

残された私と信都さん。数分、無言が続いた。

しばらくして、信都さんが口を開いた。

「今じゃダメか?放課後まで待てない」って。

そんな、こんなとこで…って、そうじゃなくて!

教室に置いてきたんだもん。

「さすがに今は…。放課後、生徒会室でお願いします」と私が言えば、

「楽しみにしとくから…せめて、仲直りだけでも今しよ?」と上目使いで信都さんに見られた。

「ごめんなさい。私が苛立って八つ当たりしてしまったばっかりに…」と私が言えば、

「俺こそ、大人げなかったな。悔しかったんだ。すまない」と信都さんは謝ってくれた。

そして私たちが笑いあってると、咳払いが2つ聞こえた。

そこにはトレイを持って最高の笑顔を向けてくれている、光と高見さん弟がいた。

「仲直りおめでとう?やっとかぁ」と言って、信都さんの横に座った。

そして光は私の横に座った。

「ほら、おまえも飯取ってこい」と高見さん弟に促されて、信都さんはご飯を取りに行った。

私はお弁当なので、お弁当を出した。

「会長、放課後空いてますか?生徒会室お借りしたいんですけど…」と私が言うと、

「いいよ。使ってって俺もいていいのかな?」と言われて、もちろんですと私は頷いた。

「もちろん、俺にも用意してくれてるんだよね?」と高見さん弟に言われた。

その笑顔、怖いんですけど!

「もちろんです。今無くて…」と私が笑うと、「楽しみにしとく」と頭を撫でられた。

そこに信都さんは帰ってきた。

改めて四人で食事を始める。

「もうこのメンバーで食事出来るのもあんまりないね」としみじみ言う高見さん弟。

「そうですね。寂しいです」と私が言えば、「まあ…」と高見さん弟は笑った。

それからまったりした時間を過ごした。

そしたら、あっという間に、昼休みが終わってしまった。

私たちはそれぞれ教室に戻った。

昼からの授業は少し楽しく感じれた。

って元々、私勉強嫌いじゃないし?

昼からの授業も終わり、放課後になった。

「気つけてな。俺、帰るから」と言って、光は去っていった。

女とデートか?随分早々と帰るなぁ~なんて思っていた。

違うんだろうけど。

私は帰り支度を終え、教室を出た。

廊下を歩きながらこれからのことについて考える。

と言っても、信都さんらが卒業した後のことだけど。

ボーッと歩いてたせいか、勢いよく横を通った男子生徒と肩がぶつかってしまい、よろけてしまった。

「どこ見て歩いてんだ?」と勢いある罵声が廊下中に響き渡る。

「あぁ?どこ見てるもくそも、廊下走ってんじゃねぇーよ」

条件反射で私の口からはそんな言葉が出てしまっていた。

「…ん、だと…?」と胸ぐらを掴もうと私の方に視線を向けたその男子生徒は、私の顔を見ると顔色を変えて、「すいませんでした」と勢いよく頭を下げて去っていった。

はあぁ、最近はこんな日も多いのよね。

私が何をしたって言うのよ?

私は少し早足で生徒会室に向かった。

生徒会室にてー

私はドアをノックする。

中からどーぞと言う会長の声が聞こえて中に入った。

既に信都さんも来ている。

「遅かったね?何かあった?」と高見さん弟は聞いてくれる。

こんなときだけは優れた勘を発揮して聞いてくれるのだ。

「廊下で男子生徒とぶつかりました。危うくケンカになりかけましたが、私を見て去っていきました」と私が言えば、

笑いながら、「さすが、綾野さん」と言ってくる高見さん弟。

「さて、余談はここまでかな?そろそろ本題入ろうか?」とニッコリ笑って言う高見さん弟。

「…バレンタイン渡したくて」と私は言って高見さん弟に差し出した。

「俺に?ありがとう」と笑ってくれた。

「これは高見さんに…カードも添えときました。よろしく言っといてください」と私は言って、高見さんの分を高見さん弟に託した。

「ありがとう。伝えとく。兄さんも喜ぶと思うよ‼」と会長は笑った。

「…俺の分もあるよね?」と信都さんは聞いてくる。

もちろん用意はしてある。けど…

「…ありませんよ…」と意地悪を言ってみた。

かなりしょげた顔をする信都さん。

うっ、…可愛い。

「…断ったのに…。香からだけもらいたくて…。彼女以外からのは受け取らないって。喧嘩してるならもらえないんじゃない?とか言われたけど、俺は信じてるから!って言ったんだよ?なのに…ほんとに俺のは無いの?」と言ってくれる可愛い信都さん。

嬉し過ぎて、「冗談ですよ!信都さんのは…特別に別なものを用意しました」と私は言って大きな箱を渡した。

そう、最初からそのつもりだった。

みんなにはチョコクッキーを渡した。

けど、甘党の先輩には特別にチョコケーキを作ってきたのだ。

「やったぁ‼開けていい?」と目を輝かせる信都さん。

どーぞと言うと、嬉しそうに箱を開けた。

そして…言葉を失ってる。

「…これ、ほんとにいいの?香が作ったの?」と信都さんは聞いてきた。

「はい。最近この準備でずっと忙しかったんです。中々上手く出来なくて…」と私が言えば、ありがとうと抱きしめられた

「俺のは何?」と高見さん弟が乱入してきた。

「みんなにはチョコクッキーを…」と私は言った。

「今食べていい?」と言う信都さん。

どーぞとしか言いよう無い。

私は紙皿とフォークを渡した。

そしたら意外な光景が…信都さんが、高見さん弟の分を取り分けてる?!

「お前も食べとけよ。せっかくだから」って。

言い方は無愛想。それでもあの対立してた信都さんとは思えないほどの優しさだった。

「いいの?散々嫌がってきたくせに…」と高見さん弟が言うのを見て私も同じことを思った。

「最後だかんな?」と言った信都さんの言葉に何となく傷つきながらも納得した。

「兄さんはいいのに、俺とは大事な香を会わせたくないって訳?」と高見さん弟が言うと、

「そこまで言ってないだろ!」と反論してる。

私はクスクス笑ってしまった。

二人がまたしてもくだらない言い合いを真顔でしてるもんだから。
< 27 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop