あの日、私は兄に誓う
返事はすぐに返ってきた。

『春休みで時間あるから会おう』って。

良かったぁ、とりあえずひと安心だわ。

ノギリンが「ほどほどにして帰れよ」と言ったので、私はおとなしく返事した。

私はノギリンにサヨナラを言って、生徒会室を出た。

そしてゆっくり廊下を歩いた。

階段を降りて、くつ箱のところに着くと、光が待っててくれた。

「お疲れ様!」と私が声をかけると、笑顔を向けてくれた。

嫌な顔一つせずいつも笑顔で合わせてくれる。そんな光が大好き。

けど…それは恋愛感情では無いことをお互いによく理解している。

「香もお疲れ様!生徒会の初仕事はどうだった?」と光は言って歩き出したので、私も並んで横を歩く。

「大変だよ。ほんとに…やることは多いし。けど…やりがいはありそう」私はそう答えた。

光はそっかと笑っていた。

それからは世間話をしながら歩いていた。

そしたら高見さんに声をかけられた。

「今、大丈夫?」って。

もちろんです!私はそう言って光にバイバイして高見さんと歩き出した。

どこかの店に入ることも考えた。けど…内容が内容だけに入ることを躊躇していた。

高見さんは私のそんな様子に気づいたのか、何も言わずただ横を歩いてくれた。

そしてしばらくして、切り出した。

「なんの話だ?」と。

「単刀直入に聞きます。ドラッグが動いてると?
それも校内で…」と私が言えば、

「お前も生徒会、ましてや、会長になったんだ。それぐらいのことは知っとくべきだと思ってな、生憎、弟は何も知らなかったからさぞ、平和だっただろうがな。俺はお前に何とかしてほしいんだ。お前なら出来るはずだから」と高見さんは言う。

『お前なら出来るはず』皆が私にそうプレッシャーをかけてくる。

だからこそ余計不安になるんだ。

確かに、私は総長として、夜の街にも繰り出している。少なからず、情報は何処かに転がっているはずだ。

それを見越してと言うことなのか?

そんな顔をしていたのか、高見さんに笑われた。

「正直過ぎるよ」って。

やっぱり、読まれてる…。

「そういえば、バレンタインの時はありがとね。ちゃんと弟から受け取ったから。しかもカードまで…。これ気持ちだけど、受け取って?」と高見さんは言うと私に小さな箱を渡した。

私はその箱を開けてみた。

可愛いお菓子が沢山詰まっていた。

「ありがとうございます‼」私は嬉しすぎて思わず抱きついてしまった。

引き離すことはせず、優しく抱きしめ背中をトントンしてくれた。

それだけで勇気が貰えた。

『大丈夫。頑張れ!応援してるよ』って言われてるみたいで。

「ありがとうございます‼私頑張ってみます!」と私が言うと、優しく微笑んでくれた。

私たちは離れた。

「マニュフェストは決まった?」といきなり聞かれた。

そうだ。高見さんも会長だった。決めたんだよね?マニュフェスト…。

私はマニュフェストの経緯を話すと、

「そうか、それは随分面白そうなマニュフェストだ。頑張ってうちの学校の株を精一杯あげてくれ‼」と言ってくれた。

って、高見さん、あなたもう卒業してるじゃないですか!

思わず心でそうツッコんだ。

「楽しみに待ってるから。お前が無事任期を全うしてウチに入学してくるの」と高見さんは言って優しく私の頭を撫でてくれた。

そして、家まで送ってもらった。

「ただいま~」と言って家に入ると、

「おかえり~」と迎えてくれる博明さんとお父さんとお母さん。

いつもの見慣れた光景に私は何も言わなかった。

私はいつものように手を洗って食卓に着く。

そしてご飯を食べ始めた。

無言の時間が続く。早々と食事を終えて、部屋に向かってたら博明さんに声をかけられた。

私たちは部屋に入ってベットに座った。

「大丈夫か?随分顔疲れてるな」って言ってくれる博明さん。

ほんとに優しくて、いいお兄ちゃん。

「私、聞いてなかったの…会長だなんて」と私が言うと、

「頭いいのにそーゆうとこ、鈍いよね。会長に生徒会指名されてる時点で気づくでしょ?」と博明さんに言われた。

そうかしら?と思いながらも、苦笑いしか出来ない。

「で?そんなことより!って顔してるけど…」と博明さんは言う。

さすが博明さん。こーゆうとこ、鋭いのよね。

「実はね…」と私は今日ノギリンに言われた話をしてみた。

やっぱりなって顔をしている博明さん。

「気づいてたのね?」と私が言えば、

「まあな。状況考えてみ?ウチのやつはさすがにしてないと思うけどな。動いてるのは間違いない。伝統ある学校だ。OBとかが後輩に回してる可能性も充分に考えられる」と冷静に言ってきた。

確かにそうかもしれない。私は何にも気づいていなかったわ。そーゆうとこが甘いって言われるのかもしれないわね。

博明さんは対策を一緒に考えてくれた。
< 34 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop