あの日、私は兄に誓う
翌日から、私は生徒会の仕事とは別にブツの動きを追うことになった。

早く月日が流れていく。

気づけば夏になっていた。そろそろテストと体育祭がある時期。

忙しさはいつもに増している。

生徒会の空気感も少しピリピリしている。

今は夜の活動も怠れない。夜な夜な情報収集するため、あちこち巡回しているのだ。

だいぶ疲れが溜まってきた。

こんなに過酷になるとは思ってもいなかった。

テスト期間中はこちらも下手には動けない。けど…逆にそれはそれでチャンスではある。

プレッシャーに押し潰されそうになってる時こそブツは動きやすくなる。

つまり、私にとって眼光を光らせる時だ。

生徒会室で資料に目を通しながら1人唸っている。

ちなみに今見てる方の資料は体育祭の方。

マニュフェストに掲げた学力の向上は順調に進んでいる。

だからこそ、今回のテストが肝になるのだけど。

「お疲れ様、無理すんなよ?」と笑顔を向けてコーヒーを入れてくれたのはノギリンだ。

「ありがとうございます」と言って私はコーヒーをすすった。

「動きはあったか?」と聞かれた。

無いこともない。が、現場を抑えるのは非常に難しい。

「ブツの出所はわかってんですけどね」と私が笑うと、

「OBが関係してたりするのか?」と言われた。

「そうですね。けど…やりあったことはないやつなんで話が通じるかはわかりません」と私は言った。

そう、やつは学生に売り付けるのを専門としているだけで黒幕では無いのだ。

そんなやつを絞めても状況は変わらない気がする。

私はノギリンにそう、伝えた。

「それで、どーするつもりだ?」と言われた。

どーすればいいのか、正直わからない。

今はテスト期間中で私の忙しさもピークなのだ。

黒幕を突き止めて締めるべきか?それとも、今の段階でわかる状況をサツにあげるべきか?

学校のためになんとしても取引だけは阻止しないといけない。

私はまた苦しんだ。

そんなとき、スマホのLINEの音がなった。

見ると、大好きな信都さんから迎えに行くとのこと!

嬉しすぎて私は考えることを辞めた。

「彼氏、迎えに来るのか?随分嬉しそうだな」とノギリンは言ったので私は大きく頷いた。

「なら、この話はここまでだ。楽しみにしてたろ?気をつけて帰れな」とノギリンは言って去っていったので、私も早々と生徒会室を後にした。

私は急ぎ足で廊下を歩き、階段を降りてくつ箱で靴を履き替えて、グランドに出た。

「信都さ~ん」と私は言って思い切り信都さんに抱きついた。

久しぶりで嬉しくてたまらない。

優しく抱きしめてくれる信都さん。私はしばらく信都さんに抱きついていた。

「久しぶりだな。元気だったか?」と声をかけてくれた。

元気ですと答えたものの、「あまり元気そうじゃないな」と返されてしまった。

「俺には隠さず言って?じゃないと俺が辛い」先輩は私から離れて、視線を合わせるとそう言った。

私は打ち明けた。全部。

会いたくて、寂しくて気が狂いそうだったことも。

信都さんは優しく頭を撫でてくれた。ゴメンなって。

私達は手を恋人繋ぎで繋いで歩き出した。

しばらくして、

「よしっ、俺が協力してやる」といきなり言い出した信都さんは何処かに電話をかけ始めたので私達は一旦手を離した。

横で聞いてると、どうやら取り巻きだった不良(連れ)らしかった。

すぐにその人は現れ、改めて私はその人に逢った。

「お久しぶりです。綾野さん」と頭を下げられた。

相変わらず私達の関係は変わっていないようで…

複雑に感じながらも、「お久しぶりです」と返した。

状況を説明し終えた私はとあるブツを渡された。

偽のブツだ。これで相手をおびき寄せるんだと。

けど…学生達に売り付けてるのを知ってる私。メドはついてるのよ?

「ソイツ締めれば、上は必ず動くだろう?」と言われた。

そうか!感ずかれたとなると必ず何かしらのアクションは起こしてくるわね‼

さすが!って感心してる場合じゃないけど…

「俺の存在忘れるな!」って信都さんに抱きしめられたて腕の中。

信都さんは暖かい。さっきはそれを感じれる余裕はなかった。今は信都さんの温もりを感じれる。

「じゃあ、またね。いつでも呼んでよ!協力出来ることはするから」そう言って去っていく不良さんを見送った。

「改めて、デートし直しな‼」と信都さんは言うと、私の手を握り直した。

私達はそれぞれの近況を話し合ったりしながら楽しい時間を過ごして家に帰った。

「ただいま~」と家に入った私は食卓に着くと、信都さんとデートしてきた話をした。

嬉しそうに聞いてくれる、お父さんとお母さん。

そして、複雑そうにしながらも聞いてくれる博明さん。

「無理すんなよ?」と博明さんは言ってくれた。

私が毎日忙しく動いているのを知っている博明さんは特に何かを言うわけではないが、決まって、『無理すんなよ』とだけ声をかけてくれる。

博明さんがいつも一番近くでそう言いながら支えてくれるから私も頑張れた。






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