あの日、私は兄に誓う
ー放課後

生徒会室に来た私。

中に入ると見覚えのある光景。

高見さんが会長の席に座り、資料を見ていた。

凄く険しい顔をしていた。

ブツの関連資料でも見ているのだろうか?

私はそっと近づき、コーヒーを机に置いた。

一瞬高見さんの体が大きく反応した。

「びびらすなや‼」って。

軽く睨まれた気がしたが、そこはあえてスルー。

「何か分かったんですか?」と私が聞けば、

「めどはついてるって言ってたよな?」と真剣な顔の高見さん。

「はい。けど…彼は下ですよ。学生に回すのを仕事にしてる。黒はそー簡単に動きません」と私は言って、あの人にもらったブツを差し出した。

「だろうな。で、これは?」と高見さん。

「高見さんなら検討がつくかと…」と私は言って笑った。

今日は生徒会の活動も無いし、メンバーはこない。

この話をするにはもってこいだ。

高見さんはそれを受けとると、席を立ち、

「とりあえず座って?会長様」と言った。

なので私はお言葉に甘えて座らせてもらった。

高見さんは部屋のなかを歩き回る。そのブツを見ながら。

私には何をしてるのかさっぱり…。けど、きっと何かあるのよね?

私は椅子に座りながら資料に目を通した。

候補?と思われる数人の名前が。

「これは?」聞かずにいられなかった。

けど…高見さんは聞いていないのか、一人でブツブツいいながら部屋中を歩き回っている。

そこに、ノギリンが入ってきた。

ノギリンはいきなり高見さんに抱きついた。

「ああ?」とノギリンを睨み付ける。

「ごめん、ごめん。で、そのブツは何だ?」とノギリンは高見さんと同じことを言った。

「いやぁ、教えてくれねぇーすよ。香が」と高見さんは言っている。

そしてノギリンは私の方見て、近づいてきた。

鋭い目つきに思わず強張る。

優しい聞き方で、「誰から受け取った?」と聞いてきた。

いや、ほんもんじゃないし!二人とも気づいてないの?

そんなわけないよね?

あのブツをずっと追ってきた二人だよ?素人では無いでしょ?

「あのーそろそろ返してもらえます?大切なモノなんで」と私は言ってみた。

「どーゆうことだ?」と高見さんは私に詰め寄る。

ノギリンも同じような目をして私を見てきた。

さすがの私でも、二人同時に詰め寄られたら、怯むわ。

「お守りみたいなものなんです」と私は言った。

事実、今はお守りにしている。

「素人ではないはずです。お二人はずっとブツの動きを見てきたのでは無いですか?」と私は言った。

「…確かにそうだが…」とノギリンは言う。

ノギリンに関しては、高見さんが入学する前から追っていたはず。

この成分を見分けられないわけないと私は信じてきた。

けど…実際はそんなことも無いのだろうか?

一般人は気づかない?

それはそうかもしれない。だからダシに使われる。

「お守りにしたいほど、病んでるのか?」って、高見さん、づれてません?

確かに、病みそうだけども!

「ちょっと貸して?」とノギリンは手を出す。

高見さんは渡した。

「…なるほどね…」と散々見て、そう一言だけノギリンは発した。

「で、誰の努力?」と今度は聞き方を変えてきた。

そう、私に入れ知恵したのは誰かと。

「去年のOBです」とだけ私は言った。

「…確かに、精巧だな。これなら一般人は騙せる」とノギリンは意味を理解したのか言ってきた。

「まさか、それであげるつもりか?」と高見さんは言う。

「そうです。おびき寄せるには最高の品です」と私は言った。

そして鞄から1通の紙を取り出す。

そしてノギリンに渡した。横から高見さんも覗いている。

『成分表』だ。

確認した二人は危険物でないことを理解したようだった。

「さて、今日はここまでにしようか。明後日からテストだからね!頼むよ」とノギリンに圧をかけられたが、

一礼して生徒会室を後にした。

「待って、送ってく」と高見さんは言ってくれたので、送ってもらうことにした。

私達は他愛ない世間話をしながら家に帰った。

「あのー聞き忘れてました。机にあったのって…」と私が言うと、笑顔で唇に人差指をおいて「検討はついてるんだろ?」と返された。

確かにあの名簿は分かりやすい位だった。
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