あの日、私は兄に誓う
私は思わず後ずさる。ここでの乱闘だけは避けたい。けど、どーしていいのか、正直わからない。

ふと、そこに空気読めないのか、はたまた空気を読まないのか、1人の男子が現れた。

ひとつ下の後輩君だった。

「おはよーございます。先輩?大丈夫ですかぁ?」と私の顔を覗きこんできた。

何も知らないであろうこの子の屈託ない笑顔に私は一瞬怯んだ。そして決意する。

守らなければ!と。

ウカウカはしていられない。何のために生徒会をやっているのか?

学園の平和を守ることも私の仕事…。

私だけならまだしもここにいる全ての人に指一本触れさせてはいけない。

そう思った瞬間、スイッチが入った。そして、光はそんな私を見て手を離してくれた。

「大丈夫よ!あなたは下がりなさい」と笑顔で優しく私は言った。

そしたら、一瞬首をかしげた後輩君だけどすぐに私から離れた。

光も私の横で応戦スイッチを入れたように思われる。

私はそれを見て、ゆっくり頭に近づいた。

「…朝から随分威勢のいいことですわね。人の学校乗り込んできて…」と私は言う。

てか、テストの日に朝からいらん体力使わせるなや?が本音。

「…あぁ?あんた頭か?頭にしか用はない」と言ってきやがった。

はあぁ?何それ。ムカツク。

「…頭?人聞き悪いわよ。あなた。私はここの生徒会です」と私は言った。

「…生徒会?はっ?だっさ、ちょっとさぁ、絡まないでくれない?俺が用あるのは頭」と言ってきやがった‼

あー、もぅ、ほんとに腹立つわね!

「…生徒会なめんじゃないわよ‼私が頭よ!会長だしね!今日はテストなのよ?あんたらの相手してるほどみんな暇じゃないの‼お引きとりださい」と私は言った。

動かないやつらを見て、強行手段に出た。

そして何とか、相手を帰らすことに成功した。

「…ふぅ、もぉ、めんどくさい人らね。誰の差し金よ?」と言って一応辺りを見渡した。

グランドには硬直したウチの生徒たち。

そりゃ、そうか。あそこまでしたんだから。

そしたらいきなり拍手と共に数名?近づいてきた。

生徒会メンバーとノギリンだった。

「…さすが!会長‼」と声が飛んで、少し恥ずかしくなった。

「ほら、お前らみんな教室入れよーテストするぞ」とノギリンは生徒を教室に向かわせる。

そして私と光もそれぞれの教室に向かった。

相変わらず、ウチのクラスはピリピリしている上に、私は冷たい目で見られている。

それでも負けないって決めたんだ。

イジメを受けてるわけじゃない。ただクラスに馴染めてないだけ。

私は自分にそう言い聞かせて、席に着いた。

ーテストが始まった。

まあ、相変わらず?楽勝よね。私は早々書き終えて机に突っ伏す。

当たり前のように。周りは時間いっぱいまで使って最後のあがきをしてるわ。

って私、少しひねくれてたわね。ダメだわ。

はあ、信都さんに逢えないかなぁそんなことばかり考えちゃう。

何とかテストも無事終わり、帰り支度をした。

そして、私はその足で生徒会室に向かう。

今日から部活も解禁される。今日の廊下は騒がしい。

そんな廊下を抜けて、生徒会室に入った。

鞄を置いて、椅子に座った。

そこに待ってましたーと言わんばかりに入ってくる生徒会メンバー。

口々に今日の朝の出来事を称えてくれる。

私はありがとうと言っといた。

やっとテストも終わったし、ゆっくりしたいところなんだけど、忙しくも次は体育祭なのよね。

「それぞれの種目決まってるのかしら?」と声をかけると、「はい、こちらの資料を…」と副会長が渡してくる。

そう、ここは一声かければ仕事が行われる私にとってやり易い最高の空間。

こここそ居場所だわ。そう思うの。だって教室居づらいんだもん。

相変わらずノギリンは乱入してくる。

そしていつものように?私に抱きついた。

「テスト、おつかれさーん」って。

「もぉ、抱きつかないでください!あんまりすると、セクハラですよ‼次は体育祭ですね」と私はノギリンを引き離しながら言った。

ノギリンはブーブー言いながら少し拗ねているところがまた少し子供みたいで好き。

私はそれを見て、少し笑ってしまう。

早々に体育祭の話を終えて私達は解散。

まだ座ったまま、涙を堪えるのに必死になってる私。

けど、私は堪えきれず涙が溢れてきた。

いじめられてもここまで辛くなかった。

なのに…今は何で?いじめられてもないのに。

孤独だから?ううん孤独ではないはず。

けど、クラスでは馴染めないし、1人。

突き刺さる冷たくて痛い視線…。

耐えられないよ…けど、ここまで来てやめられない。

私は生徒会にまで就任した。

仕事が多すぎる?テストが難しい?

そんなことは大した否じゃない。

ただ苦しい。そう思うと涙は次から次へと溢れ出てくる。

『お兄ちゃん』私は心でそう呼んだ。

いないってわかってはいるのに…。

そんなとき、ドアが勢い良く開いた。

私は顔を上げられないため、誰なのか、わからなかった。

けど…優しく後ろから抱き締められて気づいた。

信都さんの温もりだって。

「無理すんな。俺の前で無理して笑わなくていい。俺も香が苦しんでるの、辛い。けど…俺はそばにいる」そう言って、優しく、力強く抱き締めてくれたんだ。

私はまた声をあげて大泣きしてしまった。

「いっそのこと、学校やめて、俺のとこ来るか?」と信都さんは言ってくれた。

それってもしかして…

私の顔を覗きこんで、「ごめん。冗談、確かにそうなってくれたら嬉しいけど…今はまだ無理だよね。卒業して、高見さんと同じ大学行くんだもんな?」と信都さんは笑うのだった。

そうだったー

何度も辞めたいって思った。それでも頑張ろうって思えてたのは、高見さんと同じ大学に行くという目標のためだった。

私は信都さんに「ありがとうございます」と言った。

「ちょっと元気出た?さてと、デートして帰ろうか?」と信都さんは言って私から離れると満面の笑顔を向けてくれた。

私達は生徒会室を後にした。

疲れてるだろうに、それでも笑顔で私を励まそうとしてくれる。

その優しさに私は今日も甘えてしまってる。

仕事の話もしてくれた。何だかんだ、忙しそうなのに楽しそう。

それを聞いて私も少し楽しくなった。

私は信都さんのこーゆう気遣える優しさが大好きだ。

楽しいし、これからもずっと一緒に過ごしたいって思える。

私達はそのまま手を繋ぎ、散歩して、ショッピングして、映画を見て家に帰った。

そして私は家で初めて両親に本心を話すことにした。

今まで心配かけたくなくて言わないできた。博明さんも私のその気持ちに気づいて黙っていてくれた。

だからこそ、今日伝えるー
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