あの日、私は兄に誓う
「ずいぶん、なついてるね。キミ…名前は?」と光は言った。

「…ボクは…尊(タケル)です」と後輩君は言った。

「…お兄さんいたりする?3年に…」ナゼか私はそう聞いていた。

「あー、はい。いますよ」と笑顔で言われた。

やっぱり…じゃぁあの人そうかな?

「その人何組?名前は…?」私は食い入るように質問攻めしてしまった。

「どした?」と光が聞いてきた。

「…あーあのさ、今日もぶつかられたって言ったよね?誰かに似てる気がしたの。尊君だ!ってふと思ってさ」と私が言うと、あーなるほどと光は納得した。

「…お兄様に間違いないと思います。数年前、事故にあったお兄様は、後遺症が残り、平衡感覚を失いました。ぶつかっても気づけないんです。」と後輩の尊君は言った。

あーなるほどね。

「やりたいことも出来なくなって、心を閉ざすようになってしまって、家庭環境は最悪に…」と辛そうに尊君は言う。

何とかしてやれないだろうか…

私は悩む。

「光、協力してくれるわよね?」と私が言うと、「もちろんですが、何か考えが?」と返してきた。

考えなんて無い。けど…やれるだけのことはしたいのだ。

「やってみるだけの価値はあると思う。尊君も!」と私は言った。

尊君はポカーンとしている。

けど…光は私のことを理解しているのか、大きく頷いてくれた。
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