あの日、私は兄に誓う
fifth
それから毎日一緒に過ごすようになったとき、夏休みを迎えてしまった。
幸い夏休みということで、登校時間が決まってないのは有り難い。
まあ、一週間くらいは家でのんびりしよう。
どうせ、後半は駆り出されるんだし。
昼過ぎに起きて、宿題をしてテレビをつける。
何だろう、やっぱり少し寂しいというか、退屈なんだよね。
博明さんも、信都さんも仕事だし、連絡するのは申し訳ない。
ふと思い立って、私は散歩に行くことにした。
着替えて家を出る。
ジリジリとした灼熱が体中の毛穴を開かせ、汗が滝のように流れ落ちてくる。
宛もなく歩き始めたのはいいけど、あることを思いつき、私は歩みを進めた。
高見さんのいる学校にオープンキャンパスで参加することにした。
早速高見さんに連絡した。
すぐ行くとほんとにすぐに迎えに来てくれて私たちは大学に向けて歩き始めた。
他愛ない会話をしながら歩いた。
そして大学に着いた。
想像以上にデカイとこだ。迷いそうなデカさだった。
高見さんは順番に説明しながら歩いてくれた。
私は楽しみでならなかった。
とある広場辺りで男が声をかけてきた。
どうやら、高見さんの知り合いらしい。
「おい、おい夏休み初っぱなからイチャついてんなや、って高見さん?」と少し怖い口調。
かなりのイケメンさんなのに。
「そう見えるか?違うよ。この子、俺の後輩よ?ここ希望してるから案内してるの」と高見さんは言う。
「そうけ、それは失礼しやした」と言いながら、私を舐めるように上から下まで見てくる。
なんやねん、言いたいことあるんけ?心の中でツッコんで見た。
「やめとけよ。俺の大事な女やからな」と釘を刺してくれる高見さん、
けど、そんなこと聞いてない男。
「高見さんの女っすか?」と言ってきた。
「まあな」と胸を張る高見さん。こういうときはめんどくさいから言ってるんだろうと思う。
「…違います…」なのに‼
何で私ったら正直に言っちゃうのよ!
「…へぇ、いい女じゃん」とナンパでもしそうな勢いで言われる。
「大人しくしてろって!葵」と高見さんはキレ気味に言った。
葵と呼ばれたこの男、そんな奴じゃないらしい。
「死にたくなかったらな!」と付け出し不敵な笑みを浮かべる高見さんに私はゾクッとした。
「あの、私綾野香と言います」と私はナゼか自己紹介していた。