ぬり絵 -花言葉でラブレター-
*文化祭前日*
「おう」
文化祭の前日準備でいつもより遅くなったがいつも通り鈴菜の病室に顔を出す。
「あ、おかえり柊也
いつもより遅かったね」
鈴菜はいつも通りベットに座っている。
「ああ、準備とかあって
てかさっきまで寝てた?」
「うん
なんで気づいたの?」
「ほっぺたに跡ついてる」
「え、ほんと?」
「うん」
僕の返事を聞いて慌ててほっぺたを拭い始める。
「それにしても...
そっかあ文化祭かあ
どんな写真にしたの?」
「夕日のやつ。
一番夕日が綺麗なところで撮った」
「そうなんだ
見せて見せて」
興味津々、といった様子でこちらを見る
が、
「もう渡した」
「そっか
見に行ってもいい?」
残念だ...という顔をした直後、眩しい笑顔で鈴菜はそう言った。
「だめだ」
「なんでぇ!!」
心底残念だという顔で鈴菜は言う。
「だめに決まってるだろ
人が沢山いるし、気分悪くなっても助けられないだろ」
「ちぇ~」
学校の雰囲気を一日でもいいから知ってもらいたい。
僕もそう思っている。
でも、もし鈴菜になんかあった時、助けられなかった時、絶対後悔する。
だから、残念だけど、今は我慢してほしい。
「鈴菜の体調がよくなったら
僕が卒業した何年後でもいいから一緒に行こうな」
こう言ってから鈴菜に次はあるのかと心配になる。
鈴菜は今の言葉を聞いて逆に気分が悪くなったりしないだろうか。
恐る恐る鈴菜を見ると、
「そっか...
来年も、再来年もあるもんね!
じゃあ私はまたいつかを楽しみにしてようかな!」
輝く笑顔で言ってくれた。
どれだけ
どれだけこいつはいい奴なんだろう。
「まぁ、僕もう3年だけどね」
「あっっっ!!!!」
思い出したように鈴菜は叫び
「やっぱり行きたい~~!!」
「僕明日早いからもう帰るけど
絶っっっ対来るなよ!!!」
いやだぁぁぁ
と言い続ける鈴菜を残して僕は病院を出た。