幸せ探し
私とあなたとあなた
愛してやまない人から愛されるのが一番幸せなのだろうけど、世の中そううまくはいかない。
街を歩くカップルや、寄り添う夫婦、本当は愛し合えるってことが奇跡に近い特権なんだって、私は知っている。
2年前、会社の合同パーティーで出逢った司と私は結婚した。
優しくて穏やかで決して感情を荒らげたりしない大人な司に私はすぐ惹かれた。
周りからも、仕事で上司から信頼され後輩から慕われる司は人気者で、お給料も同年代の他の人よりもらっているので、「どうやって捕まえたの?」とか「こんないい人、離しちゃダメよ。」とよく言われる。
どこへ行っても人気者でいつもニコニコしている司を1人占めできて、私は幸せだった。
ただ、私は司に愛された記憶がない。
司は冷淡でも冷酷でもないけれど、その優しさは本当に皆に平等で、あくまで私もその中の1人にすぎないと結婚してから気がついた。
「妻」というブランドだけが私が自尊心を守るたった1つの方法だった。
司の誕生日に高い万年筆をプレゼントしても、結婚記念日に夕飯を豪勢にしてみても、大切なプレゼンの前に靴をピカピカに磨いておいても、出張帰りに特別な入浴剤を使ってみても、普段となんら変わりない笑顔を浮かべて「ありがとう」と丁寧に言うのだ。
司の心が本当に見つめているものはなんなのだろうと瞳を今まで幾度となく探ったけれど、それは見つからないままだ。
そんなことをぼーっと考えていると、ケータイからメールの受信音。
From、純平。
私の幼馴染みだ。
仕事が昼休みに入ると、たいてい連絡がくる。
元気か?とかちゃんとメシ食ったか?とか今なんのテレビ見てる?とか、しょうもなく他愛もないことばかりだけど、私を癒してくれる時間だ。
そう、司が私の愛する人なら、純平は私を愛してくれる人だった。
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