幸せ探し
愛される時
とはいえどんなに司を愛していようと、帰ってこないボールを投げ続けるというのはやっぱりちょっと疲れるもので、司を仕事へ見送るとさっきまでの笑顔がサッと消えてしまう。
しぼんだ風船のようにしゅるると音を立てて力が抜ける。
愛おしい司が会社に行ったという淋しさに加えて、なんともいえない無力感が私にのしかかるのだ。
そんな糠に釘状態を繰り返す私にやっぱり純平がメールをくれる。
私が司の愚痴もこぼさない代わりに、純平も私の夫婦間のことはなにも聞き出したりしなかった。
ただ単純に素直な純平は「俺は沙織が大好きだよ」「なにがあっても味方だから」といつも気持ちを伝えてくれた。
純平はミュージシャンを目指しながらバイトを掛け持って、正直結婚向きではない。
だけど小さい頃から一緒にいた安定感と、バカとも思えるほどのまっすぐな言葉は私の心にすーっと入ってきた。
壁がない純平との時間は居心地がよくて、時々食事にもコンサートも一緒に行った。
くだらない思い出話しかしてないのに、声をあげて笑ったり号泣できる自分が滑稽だった。
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