第二部 母と妻と女の狭間で・・・ 留学時代編
 どうしたいって、行く所がない人が、
部屋の前にいたら、

「とりあえず今夜は泊めるけど・・・」

とかってなるのが普通でしょ?

 なのに、いきなり

「どうしたい?」

って、何言ってんの?
あさひの頭は、どうなってんの? 

「どうしたいって、行く所がないから・・・」

「それは聞いた。
で、これからどうしたいのか、
聞いてんの」

カチ!

私の心の、爆弾のスイッチが入った音。
 
「行くところがないって言ってんのに、
どうしたいかって、聞くのはおかしい
でしょ!
泊めて欲しいに決まってるじゃない!」

 もう、真っ赤に焼けた私の心は
止めようがなく、その怒りをあさひに
向かって、一気にぶちまけた。
 
「ああ、やっぱり泊まりたいんだ」

なにそれ?
「やっぱり」ってなにそれ?

 知ってたけど、意地悪したみたいな
感じなわけ?

 自分の悪いところだって知ってるけど、
一回火が着いたら、ちょっとやそっとじゃ、
収まらない。

「こんな荷物持って、『行くとこない』
って言ったら、泊めて欲しいから来たに
決まってるでしょ!」

 もう、ほんとに頭に真っ赤に火の着いた、
血が上って、自分でも止められなくなった。
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