第二部 母と妻と女の狭間で・・・ 留学時代編
 それなのに、私が一気にまくし立てたら、
急にあさひが笑い出しした。

「あはは、おもしろいね。
女の子の紗季が、いきなり男の部屋に来て
『今日行く所がない』って無理やり攻めてきて、
俺が、『だから何?』って聞いたら、逆ギレして、
怒り出すなんて」

 あさひの笑顔を見たら、あまりの可愛さに
一気に、心が穏やかな陽だまりに落ち着いた。

「だって、私が困っているのに、少しも助け
ようとしないあさひに腹が立ったんだもん。

「あー、俺ね、『言わなくてもわかるだろ?
察しろよ』ってやつが一番嫌いなんだ。
物事はどんな些細な事でも、自分でしっかり
決断したいから」

 はぁー、カッコイイ。

「ああ、とりあえず入ったら?」

 ここで、初めてあさひが部屋に入れて
くれた。気が付くと、私が来てから、
30分以上も経ってた。

「俺、これから図書館行くけど、
どうする?
ああ荷物はとりあえず、ここに置いといて
いいし、泊めるのもいいけど、部屋が
ないから、リビングで寝袋か、ヤマさんの
部屋か、俺と一緒に寝るか」

「あさひと一緒に寝る!」

ここは即答!

「え!、マジ?」

 初めてあさひが表情を変えた!
〈ふふん、勝ったな〉
やっと、少し優越感を感じた。

「そりゃ、いいけど、やっちゃうかもよ?」

〈やった!嬉しい!〉

 あさひの言葉に、心はまばゆく
光り輝いたけど、まさかそんな事は
言えないから、

「だいじょぶ、あさひはやらないよ」

そう答えた。
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