寝ているカノジョ
「仁奈、スマホ貸せ」
俺は仁奈の目の前に右手を突き出した。
「なんで?」
不思議そうな顔をしながらも、
鞄の中に手を突っ込む仁奈。
「ロック解除して、俺に貸せ」
仁奈は俺の言った通りにした。
ちょっと仕返ししてやるか。
俺は仁奈のスマホのLINEから
そいつのトークを開いた。
『大橋 悠希 ③』
へぇ。
悠希のやつ、仁奈に何言ってんだろ。
――――――――
12:54 仁奈ちゃんどこ?
13:25 まだ光といる?俺、スタバで待ってるよ~
13:43 帰っちゃった~?寂しいな…会いたいよ。
―――――――――
ふっ。
仁奈をお前のとこになんて行かせねーし。
「光くん?何してるの?」
「悠希のLINE読んでる」
「えー!もう、勝手にやめてよー。
悠希くん、何て言ってる?」
「お前に会いたいってさ」
「ちょっと返して。返信しなきゃ」
俺は俺の手からスマホを取ろうとする仁奈の腕を掴んだ。
「ダメ」
仁奈の代わりに俺が返信しといてやる。