P.S 母さん、愛しています。
「私ってやりくり上手〜〜!」


主婦してた頃の本領発揮!
だてに遊んでなんていなかったんだから。


「朝から晩まで毎日コンコンと働きづめたわよね〜〜」


我ながらホントによくやってたと思う。

陽希の進学代金と就職資金を稼ぐ為に。



「元から誰かの為となると頑張れたものだったわよね…」


夫の為、子供の為、家族の為。

毎日毎日、ただひたすら頑張ってたのに。



『本当に?』


誰かに聞かれたら「うん!」と胸張って答えられるか…と言うと自信ない。

本当に私が頑張ってたのなら、今の私はここに居ないはずだから。



「頑張る方向、間違えてたのかな」


過去を見るのは止めにしよう。
見ても後悔と懺悔しか残らない。


前を見る。

だから、私はペンネームに『前』の字を使ったんだ。



「本名も『前だけ見る』の『前田』だしさ!」



あっはっは〜〜!と笑い飛ばす。
久しぶりに届いたファンレターに心を浮かせながら、あっさりと過去を振り切った。



『前沢センセイの小説をこれからもた〜〜くさん読みたいですっ!

私がオトナになっても読めるような作品をどんどん書いてくださーい!

期待していまーす!


夢見る高一女子より♡』



「『拝啓』から始まった割に、『敬具』も『かしこ』もないのね。これじゃあこの子、大学受験は難しいわ…」


よその子の心配しても始まらない。

本来気にするべき自分の子供も、この手紙の子と同い年だ。


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