P.S 母さん、愛しています。
(どうしてるんだろう…)


思わない日はない。
離れて暮らしてるからと言っても私はやはり母親なんだ。


(情けないばかりの親だけどね…)


過去よりも辛いのは現実。
本にもならない話を書いて公開する日々。


『公開』がイコール『後悔』にならないよう、自分自身に言い聞かせてる毎日。

そんな日々を送りながらも諦めきれずにいる母親を責めもしない息子。

その息子を影で思いながら、手紙をくれた女子に感謝する。



(ありがとう。あなたの優しい励ましが私の力になる…)



些細な出来事がくれた潤いは、確実に自分の心を癒してくれる。

認められた手紙を光り輝く陶器のケースにしまって考える。



たまには泣き言以外の言葉を流そう。

お母さんは頑張ってるんだ…と、陽希に思ってもらおう。




『前略、愛する我が子へ』


どんな反応を示すのだろうか…と、ほくそ笑みながら打つ文字。

声で話さない分、文字で残る言葉は重要だ。



『追伸、いつも心配しています』


そう打ちたいけれど、やっぱり打ってはいけない。

そんな心配をしてあげられる程、いい親ではなかった。



『追伸、食べれる野草を今度教えて』



これで上等。

母が生きようとしてるのが分かってもらえればそれでいい。



「陽希……誕生日おめでとう」



3月26日。

私の生んだ子供は、間もなく16歳になる。


青春の真っただ中を謳歌するべく、恋に勉強に部活に励め。


2度と戻らない、青い時間を大切にして……。





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