P.S 母さん、愛しています。
謹啓、別れた父上様
親父。

俺はあんたに会ったら言いたいことが山ほどある。

ホントはあんたのこと、ハッキリ言ってあんま思い出したくもねぇ。


あんたの話は今でも家のタブーだし、誰の口にも上らねぇ。

ばあちゃんやおいちゃんだけでなく、母親も既に過去だと割りきってる。



「まぁ…俺もだけどな……」


俺と母親を捨てた男。

それがあんただ。


あんたと別れた後、母親がどれだけ苦労して俺を育ててきたか知ってるか?

出戻りと囁かれながらも、必死で笑い飛ばして生きてた。

悔しい顔一つせず、全てを当たり前だと受け止めて……。




「爪の垢でも煎じて飲めよ」


つい言いたくなるじゃねーか。

それくらいあんたはつまらねー人間だ。


美人じゃねーけど優しい女が妻で、可愛くもねーけど愛らしかった息子の俺がいて、一体何の不満があったって言うんだよ。


若い女の毒牙に引っ掛かったのかよ。

どれだけ純情ぶってんだよ。

ふざけんなよ。

呆れっだろ。



養育費?

…ンなもの、とっくの昔に途絶えたさ。


面会?

…ンなこと希望すっか!


バカバカしいことばっかだよ。

親父に関してはさ。


< 20 / 46 >

この作品をシェア

pagetop