P.S 母さん、愛しています。
親父は自分よりも15も年下の女の元へ逃げた。

正確に言うなら「仕事仕事」と言って、俺たち家族にウソをつきまくってたんだ。


それがバレたのは何故かって?


世の中には神様ってもんがホントにいるんだよ。


あいつと相手の女の密会デートの現場を、死んだじいちゃんのねえちゃんが見てたんだ。


その人は血相変えてばあちゃんの所へ走り込んできた。

そんで、全てバラされたってことさ。



鬼畜なのはそっから。


謝るどころか開き直り。


自分が何か悪いのかよって、正にそんな態度だったよな。


母親は出かけていく親父の背中にナイフでも突き立てそうなくらいおっかない顔をしてた。

でも、一切何も言わなかった。


どっかで信じていたかったのかもしれないけど、信じる前に取り返せば良かったんじゃねーかと思う時も昔はあった。


根性見せてやれば良かったじゃねーか。

こいつは自分の男だって、胸張って言っても良かったんじゃねーか。

それで家族が一緒に暮らせるんなら、万々歳ってもんだろーー⁉︎……って。



俺は小っさかったからオトナの事情は知らねーよ。

でも、母親を見ても親父を見ても般若の面を付けたみたいな顔でいたんだ。



たまらなく怖かったよ。

こっちは愛想振り撒こうとしてんのに、それすらも無視されてさ。

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