P.S 母さん、愛しています。
ゲームでもケータイでも、新しけりゃ見栄えはいいし使い易いよ。

モデルだって洗練されてるし、色だってキレイだ。


だからって、古いもんをアッサリ切るってどうなんだよ!

特に母親は、感情を持った生き物だぜ⁉︎


あんたにとって、俺の母親はその程度の女だったのかよ!

俺の母親はそんなに軽い存在だったのかよ!


あんないい妻してたのに、何が不満でフリンなんかに走んだよ!



バカタレだ!

サイテーだ!

虫コロよりも価値がねぇ!!




……親父。


いいか。よく聞け。


俺はお前が大嫌いだ。


お前の顔なんか、死んでもゼッテー見に行かねー。


そのバカな面下げて会いに来んなよ。


こっちはお前を親だなんて、一切認めたりなんかしてねーからな!!






「はー君、そろそろ機嫌治ってきた?」


莉央が振り返って顔を眺める。


「見んな!バカ!」


そう言うと莉央はブーたれて近寄る。

この顔を見ると安心させられる。

だって、こいつの顔は面白いくらいに百面相で、その表情の豊かさにこれまで何度となく笑わせてもらってきたから。



「良かった。もう怒り消沈だね」


ホッとしたように笑う。

莉央が笑うと気持ちが落ち着く。


誰かの笑い顔を見ながら生きれなかった俺の唯一の癒し。



「ほら、カバン入れていいぞ!」


荷物一つ分なんて、あの頃の胸の重みに比べれば軽い。

誰にも預けられなかった胸の重苦しさに比べたら、俺だって少々のことは平気だ。


ポケットの中に忍ばせた愚か者の母親。


あんたは偉いよ。


あんたは強い。


俺はあんたのコドモに生まれて良かったと思う。


だから、目一杯弾けて生きろ。


あの頃の重苦しさをバネに、


今を


今日を


明日をーーーー




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