P.S 母さん、愛しています。
(だから、周りを嗅ぎ回んなっ!!)


あのからかいも終了する。

あんなバカげたこと、やるもんじゃなかった。



「行くぞ!学校遅れても知らねーからな!」


チャリをまたいで漕ぎだす。


「あーん!待ってーー!!」


追いかけてくる莉央。

こいつにだけは、母親みたいなことはすんなと言いたい。

子供の成長を肌で感じながら、目一杯ハッピーな生活を送って欲しい。



(俺の側で………というのは、叶わねー夢だな……)



母親と同じ。

俺も誰も信用してねぇ。

特に気持ちなんてもの、そこら辺に吹いてる風と同じだ。



愚か者の母親。

逃げた親父。

そして、世間を皮肉ってしか見れない俺。



俺たち家族はバラバラになっちまったけど、

生き方は皆同じようにしか思えねぇ。


自分のことだけで精一杯。

誰も幸せになんてなれねーんだ。



「はー君!早くーっ!」


いつの間にか俺を追い越してる莉央が呼ぶ。


「いいから先行けよ!」


莉央。

お前だけは俺達に関んな。

俺はお前のことが好きだけど、一生それを口にする気はない。


俺はずっと1人で生きるんだ。

高校卒業したら、あの家も出ると決めてる。


母親の金なんて頼りにしねぇ。

頼まれたって使うもんか!


ポケットの中に潜む愚か者の母親を握りしめる。


(お前の努力で成した金は、ばあちゃんとおいちゃんにくれてやるよ…)


自分のことは自分でやる。

それが俺なりの意地ってもんだっ!


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