P.S 母さん、愛しています。
「莉央ちゃんじゃなくて残念だったね!」

大人びたスマイルを浮かべて俺の隣にやって来た。


「前田君と莉央ちゃん、お隣さんなんでしょ?小さい頃から一緒にいるんだって聞いてるよ!」

「だ、誰に」

「勿論、莉央ちゃん!」


(あいつ〜、また余計なことを……)


「いいなぁ、幼馴染。漫画や小説の中でも憧れの存在だよね」

「そ、そんなもんか?」


小説って言葉にはどぎつく。

考えなくてもいいヤツのことがよぎるから。


「単純に親戚や兄弟みたいなもんだけど?」

「そこがいいの。他の誰かとは違う感覚でしょ⁉︎ 」

「うーーーん」


違うかなぁ。


「私、この高校に入学する為に親元離れてきたでしょ?だから、そんな近い関係の子がいるって羨ましい」

「あ…そっか。浅香さん枠越え入学だったね」


県外入学のことを『枠越え』って言う。


「うん。生まれた町、隣の県なの」


ウチの高校のバレー部に入部したくて枠越えしてきた変わり者。

スポーツだけでなく、勉強もできるんだからスゲェ。


「長期休暇の時しか帰らないし、一人っ子だから帰っても兄弟はいない。莉央ちゃんはいいよね。弟はいるし、幼馴染の彼はいるし」

「俺、莉央の彼氏なんかじゃね」

「えっ⁉︎ 違うの⁉︎ 」


何だ、その驚き。

まさか、莉央のやつが俺を彼氏だなんて言ってねーよな?

< 31 / 46 >

この作品をシェア

pagetop