P.S 母さん、愛しています。
これにて失礼致します
「さて。なんて書いてやろうか」


莉央からもらってきたレターセットを前にして腕組み。

鼻と唇でシャーペンを挟み込み、目線を上に彷徨わせた。


「これまでがケッコー頭の軽そーな感じで書いてきたからなぁ〜」


いきなり路線変更すっとバレそうな気がする。


「でも、呪いの言葉も書かなきゃならねーし」


二度とこの家に帰って来れなくなるくらいのドギツい言葉。

作家として生きると決めた母親を完全KOできるやつ。



「う〜〜ん」


悩んだところで書ける言葉なんてたかが知れてる。

思いつくままに書く方が、きっと呪いが籠もっていい。



「書き始めは………」


ガリガリと机に向かい始める。

勉強もロクにしない俺が机についてるのを見て、ばあちゃんが「珍しい!」と笑った。


「明日雨でも降るかしら〜?」

「降りゃしねーよ!」


母親代わりのばあちゃんを怒鳴り散らしてドアを閉めた。

中学に入って以来、イライラばかりを募らせる俺を宥めすかして時には無視してきてくれた。



ばあちゃんとおいちゃんには感謝してる。

ワガママでどうしようもなく出来の悪い俺をいつも守ってきてくれたから。



「…お前よりも皆オトナだよ」


手紙の相手に向かって呟く。

ホントに思ってることなんて、この手紙の中には書けねぇ。

だから、思いきり裏の言葉を書いてやるんだ。


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