P.S 母さん、愛しています。
(何で……?どうして陽希が………?)


溢れて止まらない涙を、瞼をバタつかせながら読み耽る。


もう一度、最後の文章を目にした。



『先生の本が1日も早く書店に並ぶのを待ってます!最高傑作への近道は書き続けること!


応援してます。これからもずっと。


だから………』




「だから……ゼッタイに筆を折らないで………」



ぐっ……と声を殺すように手で押さえ込んだ。

こんなどうしようもない母親に、届けてくれた言葉の意味。






『お母さん、頑張って!行ってらっしゃい!!』



晴れやかな顔で見送られた。

あの時はまさか、こんな日が来るとは思ってなかった。


順調に書いていけると思ってた。

幾つも本を出して、胸を張って生きていけると信じてた。


躓く度に陽希の顔と言葉を思い出した。


そして、また今日、励まされてる。



『筆を折るな!書き続けろ!もう一度、最高傑作を世に生み出せ!!』



諦めたらそこで終わり。

何も前に進まない。

私は親としての責任も、娘としての愛情も捨てた。


言い訳もできない世界に飛び込んで、ただひたすらにがむしゃらに書いてたつもりだったけどーーー



本にならないのなら成功じゃない。

私は、努力が足らなかったーーーー。



何を中途半端にやってたんだろう。

何の為に作家だけに専念することにした?


自分の人生を生きる為。

その為に、陽希のことも捨てたんだ。



< 41 / 46 >

この作品をシェア

pagetop