海賊王子ヒースコート(2)
第一話:セルーデン島


 強い北風が頬を打つ。

セルーデン島はセルディスタの最北にある島なため、近づくに連れて冷たい風が吹き付けてくるから敵わない。

クレマン海賊団の船長ダリウスは甲板にてぶるりと身を震わせた。

「ああくそっ!寒みぃ!これだから北への航海は嫌いなんだよっ」

「船長ってセルーデンにはほとんど行きませんよね」

「そりゃあよレイバン。考えてもみろ。セルーデンなんて行ってもなんもねぇだろうが。お宝の噂はなし。上手い酒もなきゃ美女もいねぇ」

「ああ!納得です」

もこもこのコートをしっかり着込んで日課となっている剣の手入れをするレイバン。

彼は頬にある十文字の傷をポリポリ掻きながら記憶を探った。

「そういや、エリオットを拾った時以来っすかね?セルーデンに行くの」

「ああ……そうだな」


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