ルート学園
広すぎる廊下にコツコツと私と前を行く阿蘇さんと茶々さんの3人の足音が響く。
まるでファンタジー映画に出てきそうな大きく太い柱に支えられた高い天井。陶磁器の様な滑らかな壁。ここが日本とは違う国のように思わせるその建物に、私は目を奪われながら後ろを付いていった。
迷路の様な廊下を暫く歩いていくと、白い大きな両扉が姿を現す。茶々さんが阿蘇さんの前にささっと回り込むとその扉を開いた。そこを颯爽と通り抜けていく彼女を見送ると、ピタリ、と扉の前で足を止めた。
なんていうかこの2人・・・・・・変。
どうみても、あの阿蘇って子まだ子供よね? 15? 16? ううん、大まけにまけて18ってとこかしら。
そんな子供に大の大人が付き従うって・・・・・・でも阿蘇さんは経営者で茶々さんは秘書だって言ってたからあれが普通・・・・・・なのかしら。
そんな事を思いながら遠目で茶々さんを眺めていると、突然歩みを止めた私を不思議に思ったんだろう。茶々さんが小さく首を傾げながら「どうぞ」と部屋の中へ入るよう促してくる。
それに「ど、どうも」と言葉を返しつつ扉を潜れば・・・・・・。
「ちょっ・・・・・・」
部屋に入るなり目に飛び込んできたのは淡いピンク色のブラウスの襟を下げ、肌をはだけさせた彼女の後ろ姿で。
私は慌てて彼女に駆け寄ると、がしっと服を掴んで引き上げる。
「ちょっと! 男性がいる部屋でそんな簡単に女の子が肌をみせちゃダメでしょ!?」
「は?」
私の行動に瞳を瞬かせ眉根を寄せる茶々さんを横目に彼女の襟を調えると、下まで外されたボタンを一つずつとめていく。
「いくら彼が貴女の秘書だとしても着替えを見せるだなんて。若い子ってそうなの? もっと恥じらいを持ちなさい恥じらいを!」
「あー・・・・・・恥じらい、ですか」
「そうよ、恥じらい! 私が若い頃なんてねー、夏場のノースリーブ1枚でも近所のオバサン達にイヤラシイだとかなんだとか怒られてたのよ。まぁ若い頃っていってもそんな大昔じゃなくて10年くらい前だけど・・・・・・」
でもそこはしっかりしなきゃダメよ、とうんたらかんたら説教をしながら最後のボタンに指をかけた時。
「あのさ」
という言葉と共に、細くしなやかな指先が私の手を掴む。そしてその手を誘導する様に自分の胸へと押し付けた。
・・・・・・。いきなり何してんのかしら。いや、というかなにこれ信じられないくらいの貧乳ねこの子。
ぺったりと押さえつけられたままの掌から感じる感触に、私は彼女の奇行に首を傾げつつも哀れみの視線を送った。
私もそんな大きな方じゃないけど、流石にこれじゃ彼女が可哀想・・・・・・ん? でもいくら貧乳って言ってもこれはなんか・・・・・・そう、これは女の子の身体っていうよりどちらかと言えば・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
!?!?!?!?
その違和感がなんなのか。それに気が付くと同時に、私は飛び退く様に彼女から放れた。
「なっ、なっ、なっ、なあっ・・・・・・」
「あれ、やっと気が付いた?」
驚きに口をわななかせ、声にならない叫びを上げる私とは裏腹に悪戯が成功した時の様に無邪気な笑顔をみせる彼女__もとい彼。
つい今私がとめたボタンをもう一度プチプチと外していくと、バッとブラウスを先程と同じ様に両腕に絡めながらはだけさせる。
中性的な顔立ちの首から下に現れたのは女性特有のふくよかなお山二つなどではない。
そう、見間違えるはずもない立派な男性の胸板だったのだ。
「ぎっ・・・・・・」
ぎゃあああああああっ____。