私は、エレベーターで恋に落ちる
戸田さん忘れてるのだろうか?
私が熱を出す前に、抱えてる仕事の全部を、ルナとやるからというくらいの勢いで私に言ってきてたんだけど。
それなのに、この頃は、ルナのいい加減さに戸田さんもやっと気が付いたのか、ルナと言い争ってる様子も見られた。
私は、彼と離れられてよかったと安堵して、なるべく関わらないようにしていたんだけど。
終業時間が過ぎ、いろいろ考えている間に私は、戸田さんから逃げるタイミングをなくしたみたいだった。
気が付いたら、私はエレベーターホールで戸田さんと一緒に立っていた。
戸田さんが、ここでいいよねと言って6階のボタンを押した。
彼に言われるまま6階でエレベーターを下りると、レストランのフロアに向かった。
ちょうど、6時を少し回ったぐらい。
これから混雑して来る時間だ。
和食、洋食、フレンチといろんな店が並んでる。
「ここがいいかな」
よりによって、あの店だ。
戸田さんが、イタリアンレストランの前に立っていう。
「ここですか?」
「嫌いかな?イタリアン。でも、味はなかなかだと思うよ」
「えっと……」
私は、言葉に詰まった。
味の問題じゃなくて、どうしてこの店に連れてくるのかな……
私、この店にルナと一緒に入ろうとしていたの見たんだもの。
もちろん、そんなこと知らない戸田さんは、私にこの店がいいと勧めてくる。
「えっと、どうかな?イタリアン、好きじゃないかな?」
「いいえ。好きですよ」
「よかった。じゃあ、ここにしようか」