私は、エレベーターで恋に落ちる
メニューが置かれ、私も手に取ってどれにしようかと眺めていた。

「ちょっといいかな」

戸田さんが、そう言ってかしこまって姿勢を正した。

彼は、ぺこんと軽く頭を下げた。

「篠原さん、ごめん。俺は、君に謝らないといけない。君は俺のこと心配してくれてたんだね。ルナのこと警告してくれてたのに、そのことに気が付かなくて」

「何のことですか?」
今さら、何だと言いたい。


前は、戸田さんに対してそういう気持ちが、なかったわけじゃないけど、今はその時と全然違う。気持ちでいる。


戸田さんのことも、ルナのこともすでにどうでもいいことだ。

「その……君と離れてみて、君の良さがよくわかったんだ」

「私の良さ?」

戸田さんから離れて今は、課長と一緒に仕事をしている。

正直言って、まともに仕事ができる人と組むのはストレスが少なくなって、私としてはありがたい。

「良さっていうのは、その……女性としてのという意味だけど」

「ん?」
< 131 / 155 >

この作品をシェア

pagetop