私は、エレベーターで恋に落ちる
このまま、息絶えるまで、猛獣男に押さえつけられたままなのかと、あきらめかけた。
ドアが開いて、さっきの人が、入って来た。
いきなり猛獣が、私にに食いつこうとしてる場面を目の当たりにして、彼は目を丸くしたまますっ飛んできた。
「何にやってんですか!伊村さん、彼女泣いてるじゃないですか」
すんでのところで、間に入って私を彼から引き離してくれた。
「何やってるって、逃げようとしたから」
「ちょっと、やりすぎです」
ちょっとじゃないです。
「ああ」
ごめんなさいは?
腕がちぎれるかと思ったじゃないの。
恐いから言葉に出さないけど、目で訴える。
「大丈夫ですか?ケガしてませんか?」
優しく聞かれて、ちょっと落ち着いた。
「はい」
殺されるかと思いましたけど。
もっと、あれこれ心配してくれると思ったのに、あっさり話題を変えられた。
彼は、コピーした資料を手にしながらいう。
「えっと、それでね篠崎さん、こっちであなたの登録データ確認させていただきました」
「はあ」それでねって、それで終わりですか?
「確かに、このカードはあなたのもので、どこかで偽造されたものではありませんでした」
どういうこと?
そんなの当たり前じゃないの?
「嘘つけ!そんなはずないだろ」
狂暴男が吠えた。