私は、エレベーターで恋に落ちる
一緒に並んでる伊村さんじゃない方の男は、ちびっこだ。そのチビが言う。

「申し遅れました。私、B.C. Buildingセキュリティー株式会社の林田と申します」
彼も、禿げの上司と一緒に頭を下げた。

「私どもは、B.C. Buildingの警備をさせていただいております」
と恐縮しながら、禿げが言う。

「えっと……」
私は、交互に二人を見た。
もう一人の一番目つきが悪くて、態度もでかいのはいったい誰ですか?

「あっ、伊村さんはうちの会社の人じゃありませんから」
チビの林田さんが慌てて付け加える。

「この人は、うちの依頼で相談に乗ってもらってる、セキュリティーシステムのコンサルタントです。うちの会社の人間ではありません」とチビ。

チビの林田さんが、伊村さんの方を見た。


「えっと、お怪我の方は大丈夫ですか?」
禿げの主任が、私に気を使って尋ねる。

「ええ、押さえられた腕がまだ痛いですけど」

チビの林田さんが慌てて口を挟もうと前に乗り出いた。

「主任?実際に手を出したのは、僕ではありませんよ。
うちの警備員は、みんなプロフェッショナルですからね。警備業法はしかり頭に入れています。
間違っても、女性を捕まえて会議室に閉じ込めて、質問攻めにするなんて行為は、一切していません」
チビは、聞き取れないくらい早口で、一方的にまくしたてる。

「なんだ、そうか。それなら、早く言ってくれればいいのに」
禿げの主任は、ほっとして肩を落とした。

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