私は、エレベーターで恋に落ちる
「当たり前じゃないですか、主任」
とチビが言う。

今度は、こっちを向いて言う。
「篠原さん、あなたに対して行われた行為は、すべて伊村さんです。
訴えるなら伊村さんにしてください」

「はい。了解しました」私は、快く答えた。

「はいって、何だよ」伊村さんが抗議する。

「どんどん、訴えなさい。構わないでしょう。
この男は、我が社から、目ん玉が飛び出るほどのコンサルタント料受け取ってますからね」と禿げ主任。

彼は、会社に非がないと分かると、元気になった。

「それなら、もう帰ってもよろしいでしょうか?」
腕が痛いのはもういい。

一刻でも早くここから出たい。

「いや。ダメだ。お前にはやってもらうことがある」
伊村さんは、組んでいた腕をほどいて、いきなりテーブルに手をついた。

「お前?」
彼は、形だけ謝ったものの、相変わらず尊大な態度のままでいる。

「伊村さん、態度でかいですよ」
林田さんが、たしなめるように言うけど、人の話を聞くような男ではない。
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