私は、エレベーターで恋に落ちる
私は、オフィスに戻り、戸田さんのところに向かった。
彼は雑談みたいに、事務の女の子と話をしてたところだった。

普通なら、話が終わるまで待っててあげるんだけど、今日は仕方がない。
すぐに確認したいことがあった。

「ああ、ごめんね。その話は後で」
戸田さんに話を中断され、その女の子はがっかりしていた。

さらに、申し訳ないことに、勢いよく飛び込んで来た私に押されるように、今まで話していた女の子が戸田さんの前から、はじき出された。

彼女は、迷惑そうに私をにらみつけてから去っていく。

戸田さんは、人当たりがよくて、見た目もよくて、会社の女の子たちからも人気があった。

その戸田さんとずっと仕事をしてる私は、彼を落とすための足掛かりであり、親しくなるためのきっかけだった。


事務員という立場じゃ、席が離れた営業の戸田さんに、話しかける口実を見つける機会はそう多くない。

そんな、貴重な機会を奪った私を、彼女はギロッとにらみつけた。



私は、特定の女の子たちから、親切にされ、機嫌を取ろうとプレゼントを渡される。

たいてい、どうでもいいものや、あまりものが多かったけれど。

だから、こうしてまっすぐにらみつけてくる子は珍しい。


「それで?横田さんとは、どういう話になってたんだ?」
戸田さんは、いつもの穏やかな表情に戻っていた。
よかった。

私は、ほっと胸をなでおろした。

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