私は、エレベーターで恋に落ちる
打ち合わせルームに戸田さんと、二人きりで入る。

午後のお茶の時間。

私は、自販機で買ったミルクティーを一口飲んだ。

テーブルの端っこに無造作に資料が積み上げられている。

ファイルが重ねておかれていて、その青いファイルのラベルを見て血の気が引いた。

午後の優雅な時間は、台無しだ。

「これ……」

「ああ、ごめん。ルナちゃんが片づけてくれるって言ってたけど、どうせ君が帰って来てからここで広げてみるだろうと思って」

「ルナが?」
ルナが、と言われて合点がいった。

ファイルから資料がはみ出してる。
どう見ても、順番通り収まってない。

多分、ルナが関わってるなら、ファイルから資料を抜き出して、テーブルに広げて、とっ散らかったまま資料を拾い集めて重ねてある。そうに違いない。


だいたい、私のIDカードを紛失したのはルナじゃないの。

彼女がカードをなくさなければ、私だってあのエレベーターにも乗ることはなかった。
などと、逆恨みでもしたくなる。


戸田さんが大きな、ため息をついた。

「ルナちゃんが横田さんをとりなしてくれて、丸く収まったんだ。後でお礼を言っておいてよ」

「はい」
これから、時間をかけて資料を元通りにしなきゃいけないことは、黙っていた。


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