私は、エレベーターで恋に落ちる
顧客のヨコタプランニングさんは、個人のデザイン事務所だ。
手狭になった事務所から引っ越して、新しいフロアを借りるという契約で、戸田さんと二人で頑張って営業して来た案件だ。
もうすぐ正式に契約ってところだったのに、問題が起こっていた。
だいたい、社長の横田さんが人の話を聞かないタヌキ親父で、最初に見積もりした商品と別の商品に変更すると言い出したことが発端だ。
その上、あの親父、大型の棚まで追加した。
その分の設置場所や、搬入路の確認は、お客様の方で確認してくださいと何度も注意したのに。
朝一で電話をかけて来て、
『おい、姉ちゃん。業者が後から頼んだ棚がエレベーターに乗らないって、言ってるけどどういうわけだ?』
『それは、追加で注文された棚の方が7cm背が高いからです』
『7cmくらい変わらんやろう』
『いいえ、大きな差ですよ。エレベーターに乗りませんから』
『これ、業者に持ってかえらせる。費用はどうなる?』
『お客様負担となります』
『嘘だろう?』