私は、エレベーターで恋に落ちる
「どういうこと?」

その質問に答えることなく、戸田さんは部屋から出て行ってしまった。

戸田さんに聞くまでもなく、この件から外されたのだ。

この件に関しては、戸田さん最初だけ関わっただけで、後の事情は全然知らない。

だから、あのタヌキ親父がどういうものなのか戸田さんは知らない。

決められた通りに手続きをしても、自分たちが不利益になると、急になかったことにしてくれとか、手数料を負けてくれと言ってくる。

『私の発注ミス!!』

私は、イラつきながらルナが散らかした資料を、きれいに並べ替えて元に戻す。

紙の間から、キャンディの包み紙や、煙草の灰が見つかる。

「タバコ吸ってるのか?おい!」

これには、あきれた。

ルナは、今年二年目。

毎日、化粧の乗り具合とネイルの出来にしか興味がないはずなのに、何をトチ狂ったのか、配属希望に営業と書いて、間違って通ってしまった女だ。

彼女は、入社式の時から有名人で、てっきり事務職になると、社内の噂だった。

ところが、まさかの営業職。

あきらめていた女子社員たちは、ルナが営業に行ったと聞いて、その夜の宴会でメンバー全員、ハイタッチで喜びを分かち合ったそうだ。
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