私は、エレベーターで恋に落ちる
まあ、多少の言動が変わってるし、彼女の髪が何色になろうとも、実害がなければ私は文句を言わない。

けれど、彼女の指導係の小島さんもとうとう二年目にしてブチ切れた。

「すみません。私もう、彼女の面倒は見られません」

周りは、課長以下大慌てだった。

最後の砦が破られたのだから。

小島さんは、温厚を絵にかいたようなほんわりとした女性で、彼女が怒った姿など、一生のうちに見られるものではない。

みんな冗談で言っていたのだが、それをあっさり破って見せたルナは凄い。

心底感心する。

感心してる場合じゃなかった。


仏さまのような小島さんを、ルナは切れさせた。

そして、小島さんは、ルナのことを放置した。

小島さん以外、誰もルナの相手をできないんだから仕方がない。

でも、やる事のないルナは、オフィスにかかってくる電話を取り出した。

電話を取るのが何が悪いかって?取るのはいい。

ちゃんと決められた通り、対応してくれれば。

最低限の対応なら、彼女にもできる。

そのくらいなら、小島さんに2年かかって躾けられたから。

8割がたの電話は真面目に受け答えした。

そういうところが、ルナのずるいところだ。

みんなを切れさせると、居場所がなくなる。


でも、困ったことに、私はその2割の中に入ってしまった。

ルナは、戸田さんと私にかかってくる電話だけは、勝手に用件を聞き出した。

それでも、途中で余計な取次が入っても、電話をそのまま私たちに、回してくれるうちは良かった。

ところがルナは、電話に慣れて来て、顧客の名前を覚えてくると、馴れ馴れしく勝手に話し出した。

それで、うっとうしさが倍増した。

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