私は、エレベーターで恋に落ちる
その頃になって、ようやくルナが営業部に来たがった理由が分かった。

戸田さんに近づきたかったのだ。

直接戸田さんの電話を受けた時は、猫なで声で近づいて『お電話ですう』と彼に電話を回す。

私宛の電話を彼女が受けた時は、最悪だ。
クレームっぽい電話なんかの時は、本当に迷惑だった。

話も何も分からないうちに、客の肩を持って余計話をややこしくするのだ。
まったく、今日の事みたいに。

最悪だった。
戸田さんとも言い合ってしまったし。

この件は、戸田さん自分で全部処理してしまうかもしれない。
そうなると、彼と一緒に仕事が出来なくなってしまう。

なんだかんだ言って、私も戸田さんと仕事するのは楽しいと思っていた。

楽しいだけじゃない。
営業に来たのは、彼と一緒に仕事ができると思ったからだ。

もちろん、営業の仕事がしたかったのは一番だけど。



ようやく、ファイルの整理が終わって、棚に戻そうと両脇に抱えて歩いていたところ、さっきの二人組に遭遇した。

ダークスーツの男が、視界を遮ったのだ。

「やあ」
他人の振りしてたのに、そう言って声をかけてきたのは、林田さんだ。

私の姿を見つけた二人は(因みにもう一人は、伊村さんではなく警備主任の禿げの何とかさんだ)私の方へ向かって歩いてきた。


「ちょっと待って、今そっちに行きます」

私は、慌てて棚に鍵をかけ、二人がいる方に向かう。
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