私は、エレベーターで恋に落ちる
「こんなところで、何してるんですか?」
思わず、そう口走ってしまった。
「篠原さん、いいお知らせがありますよ」
ご機嫌な禿げの主任さん。
「協力しなくてよくなったんですか?」
素っ気なく言う。
「まさか、冗談言わないでください。協力していただくのに、ただでは申し訳ないと思いまして、こちらから、いろいろご提案したらどうかと、私共の上の方が申しまして」と警備主任が言う。
私と戸田さん。
そして営業課長が三人会議室に並らばされた。
そして、二人は私たちの前に座って、さっきもらった名刺と同じものを、戸田さんと営業課長に渡した。
「B.C. Buildingセキュリティさん。いったいどういうご用件でしょう」
うちの営業課長が尋ねる。
「実は、折り入ってお話がございまして」
営業課長は、もらった名刺をしげしげと見つめ、いったい何事かと警戒の目をした。
無理もない。B.C. Buildingセキュリティは、警備会社としては名の知られた会社だし、聞いた話では、グループ内で仕事を請け負っていて、商売上つながりがないはずだ。
課長にしてみれば、騙されてる以外、想像がつかないだろう。