私は、エレベーターで恋に落ちる
「実は、そちらの篠崎彩弓様に是非、我が社で協力していただきたいことがございまして、」

「協力したいこと?ええっ、それってうちの篠原がですか?」

課長が心配してくれたのかと、嬉しくなったが考え直した。
よく聞くと、私の能力不足を嘆いてるみたいに聞こえる。


「はい、ですので一定期間、こちらに来ていただきたいと思いまして」

「一定期間って?」戸田さんが突っ込んでくれた。

「さあ、作業を統括するものが、どの程度の報告書を作るのかということで変わってきますので、何とも言えませんが……一週間か、一か月か、あるいは……」

「はっきりしてないんですね?」

そんないい加減な話、受けられませんよね?
大事な社員を、いつ終わるか分からない仕事に出すなんて。

「そこでですね、私共と契約してですね、篠原さんの働く分をサポートできればいいのではないかと、意見が出まして」

「んんっ?」

「詳しい説明は、後でするね」と林田さん。

続けて林田さんが言う。

「それで、御社にお願いしたい件なのですが、実はうちの会社で今度、フロアを移転するオフィスがありまして、その時の備品からOA機器まですべて御社でお願いしたいのですが……」林田さんが話し終えると、ふっと息を吐いた。


「ええっ?」
聞いてたうちの会社の二人の方が、驚きが大きかった。

「それでは、しかし、篠原が一年働いてもそのくらいの利益は上げませんが……」

そう言ってる割には、前のめりの営業課長。

正直者があぶく銭を見せられて目がくらんだように言う。

私を売り渡す気満々だ。

「課長?いいお話ではないですか。お受けしましょう」
とあっさり引き受けた戸田さん。

ええっ?
いったい、どうしたの?

協力なんて、半日もすればいいんだと思ってたのに。



何でそんなに多額の契約が?

私、いったい何をしたんだ?
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