私は、エレベーターで恋に落ちる

ということで、
「早速、明日から27階のB.C. Bエレクトリック(株)さまのオフィスで、協力していただくことになります。それで、こちらが新しいIDカードです」

林田さんは、私に新しいカードを差し出した。

「えっと……」
手にしたカードを見つめる。


「こちらのカードで、明日から直接上のオフィスに来てください」
林田さんが、よろしくお願いしますとぺこっと頭を下げる。


「それで、私は明日から何をするんですか?」

話は、もう終わったとばかりに林田さんは、すでに帰り支度を始めてるし、禿げのおじさんは、ずっとにこにこしたままだ。

林田さんが、私の質問を思い出して答える。

「んん……そうですね。それは何とも。伊村さんに聞いてみてください」


「どうして伊村さんに、聞かなきゃいけないの?だって、エレベーターは警備会社の……」

林田さんは顔を上げて、細い目をかっと見開いた。

「警備はしていますが、制御システム内部の問題は、B.C. Bエレクトリックさんが対応してますので。それで、私どもは、これで……」

林田さんと禿げのおじさんは二人で仲良く立ち上がった。


「それじゃあ、伊村さんは何とかエレクトリックさんの人なんですか?」
私も、つられて立ち上がる。


「伊村さんは、何とかエレクトリックの人じゃないですよ」
林田さんが答える。


「じゃあ、あの人は、誰ですか?」

「詳しくは、本人に聞いてください。私も、様子を見に伺いますから」
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