私は、エレベーターで恋に落ちる


朝は、いつもより早く目が覚めた。


オフィスに来てもらう時間は、朝の9時ごろって言われた。

だから、家を出る時間はいつもより遅くてよかった。

『IT企業だから、就業時間はあってないようなものなんですよ。
伊村さんも、いつやってくるか分からないから、だいたいその頃に来てください』と言われた。

林田さん、そう言われましても。


適当に来いと言われると、適当にできないのが人情だ。

私は、服装からちゃんとしようと思っていた。

いつもは、コーヒーとトーストだけの朝食に、ヨーグルトとコンビニのサラダをプラスして食べる。

クローゼットの奥にかかってる、かっちりとした紺色のスーツを着て、いつもより早めに家を出た。


会社のビルのエントランスを抜け、アッパーフロア行きのエレベーターホールに向かおうとすると、いつもより人の視線を感じた。

エレベーターは、空いている。

込み合うこともなくスムーズに行ける。

ゆったりした朝を迎えれば、仕事の事なんか考えたりできるんだ。

そういう環境だから、準備に抜かりなく余裕を持ってるのかな。
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