私は、エレベーターで恋に落ちる
会社の中から、きれいな女性が出て来て、丁寧にお辞儀をされた。

私もお辞儀をする。

お姉さんに連れられて、B.C. Bエレクトリックのフロアに足を踏み入れて驚く。

真っ白な壁に、赤や緑のカラフルなテーブル。
明るいベージュ色のカーペット。

テーブルの形も丸みを帯びた変わった形で、普通の会社みたいにきちんと整えられて並んでいない。


私は、パソコンの画面に集中して作業している男性の横をすり抜け、お姉さんの後をついていく。

B.C. Bエレクトリックの社員の人は、みんなキッチリしたスーツなんか着ていない。

思い思いの服装で、目の前で同僚と議論している男性二人も着ているものがバラバラだった。

グレーの古ぼけたパーカーにジーンズ姿の男性が、ファッション雑誌から抜け出してきたようなぴったりした黒いスーツを着た、背の高い男性と熱心に議論をしている。


お姉さんに、こちらへどうぞと言われて通されたのは、パーティションで区切られた一人ぼっちの部屋だった。

真ん中にテーブルが置かれ、壁には書類棚が置いてある。

割と小さ目な部屋だった。

伊村さんは部屋の真ん中で、パソコンの画面をじっと見つめていた。


予想に反して、今日はきちんとスーツを着ている。

明るいグレーのスーツ。

それがよく似合ってると思った。
< 56 / 155 >

この作品をシェア

pagetop