私は、エレベーターで恋に落ちる
呼び寄せた理由は、なんてことはない。

モニターに映し出された画像を見せたかっただけだった。

「なんだ。最初から、そう言えばいいのに」

まあ、『こっちに来い』なんて言葉、録音されたくなかったんだろうけど。


「君が面倒くさいこと始めるからだろ!」
あくまでも、私に非があるって言い方だ。

「私は、あなたの質問に答えただけじゃないの」
丁寧に、ジェスチャーを交えて答える。

「もういい、普通に答えろよ」

伊村さんの横に立って、モニターをのぞく。


パソコンの画面は、大きめのサイズで、画面が2つに割れている。
いや、本当に割れてるんじゃなくて、左右で違う映像が映しだされてるって意味。

左側は真っ黒い画面に、数字とアルファベットの列が、上から下にさらさら流れて行ってる。

流れが速くて、見ただけでは、なんだかさっばり分からない。

右側は、防犯カメラが捕らえた画像が、スナップ写真くらいの大きさの写真が、ペタペタとたくさん並んでる。

人が通り過ぎる所や、エレベーターに乗ってる画像が、隙間なく映し出されてる。

ずっと同じ写真じゃなくて、ある程度の時間が過ぎると自動的に画像が切り替わる。
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