私は、エレベーターで恋に落ちる
星の降る夜に
「なあ、いったい何迷ってるんだ?」
伊村さんが、立ち寄った店の一つの前で立ち止まる。
この日は、ずっとブーツを探していたのだろう。
靴屋を中心に回っている。
「何の事?靴屋見て回ってるんだから、迷ってるに決まってるじゃないの」
意味が分からないって、ジェスチャーをする。
さっきから、彼と靴屋ばかり回ってた。
ぐるぐると。ブーツを履いたり、ブーツを脱いだり。
多分、こういう男性にとって耐えがたい行為なのだ。
履いたものを脱ぐなんて、無駄以外何物でもない。
言っとくけど、これはわざとじゃないし、私だけに限った変な病癖でもない。
こんなことになるなら、少しは遠慮したのに。
「ブーツ一つ買うのに。そんなに迷うんだったら、両方買っちゃえばいいじゃないか?」
彼のことをイラつかせたことで、ちょっとだけ満足した。