【企画】もしもばなし
「傘入れてくれてありがとう」なんて、こんな簡単な言葉ないのに。
智といると、なぜかいつも肝心なところで素直になれなくなる。
「ホワイトデーに雪降るとか、ドラマの演出みたいだな」
智の口からいきなり飛び出した〝ホワイトデー〟という単語に、一瞬ドキリとして。
「ほんとだねー」なんて言いながら平然を装ってみるも、バクバクうるさい心臓の音は簡単に鳴り止んではくれず。
「ホワイトクリスマスならぬ、ホワイトホワイトデーってやつ?」
「ちょっと静かにしようか、くいだおれ君」