今日から君の許嫁!!
そう言って、蓮に背を向け教室を出ようとした。が、右腕を誰かに掴まれた。誰かというか蓮だろうということはわかっているんだけど。なんだろうと思い、後ろを振り返った。

「あいつのことばっか気にしすぎ。俺のことはどうでもいいの」

机にうつ伏せ気味で蓮は言った。掴まれた腕はまだそのままだった。

私は立っていて、蓮は座っているから蓮は上目遣いになるんだよね。
上目遣いって、女の子がやるから可愛いんじゃなかったのか。男子がやっても可愛いものなんだね。可愛いどころじゃないよね。イケメンの上目遣いって悩殺ものだよね。そして、突然のデレ。いただきました。何、蓮は私を殺したいのかな。きゅん死に確定だよ。

「どうでもって。さっき、怒ってないって言ってたから」

「じゃあ、怒ってる」

じゃあって、じゃあって何。怒ってるの。怒ってないの。どっちだよ。しかも、ちょっと拗ねたような言い方は。

「もしかして、ヤキモチ。私が鎌田くんのことばっか気にしてるから」

蓮はあーあと言いながら、顔を腕に埋めてまた私の方を見た。

「瑞穂ちゃんって、なんでそういうところは鋭いの」

さあ。なんででしょう。首を傾げた。

「そうだよ、ヤキモチ。だから、あいつのところなんて行かないで」

か、可愛い。あのチャラ本蓮が可愛いだと。
ずるいよ、私にはこれに素直に答えられるスキルはない。

「でも、鎌田くん怒らせちゃったんなら謝りに行かないと」

「じゃあ、俺も一緒に行く」

「え、なんで」

「もう、昼休み終わるから放課後一緒に行こう」
そう言われて、黒板の上にかかっている時計を見るともうそんな時間だった。
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