今日から君の許嫁!!
「藤野さんが俺のこと好きじゃないのはわかってるから、ちゃんと告ったらフラれる気しかしないんだけどさ。でも、藤野さんに好きな人いないんだったらまだチャンスあるよね? 」

これもまた「ノーコメント」だ。

「藤野さんって山本くんのこと好きなの? 」

「鎌田くん私に数学教えてくれるんだよね」

「ん、そうだよ。けど、その前に今の答えて」

「ムリだよ。わかんないもん」
見えかけた問題の解放は闇に消えていった。問題をにらむのをやめてノートに落書きを始める。

「可愛いって言ってくるし、俺のこと好き? とか聞いてくるし、キスしてくるし。私ばっかりどきどきしてるのに。それなのに最近花音と仲いいし」

「藤野さん」

不意に名前を呼ばれ鎌田くんのほうを振り向いた。

「え」

目の前に広がる鎌田くんの顔のアップ。唇に触れる柔らかい温もり。

「ごめん」

すぐに顔を離して、鎌田くんは申し訳なさそうに謝った。

「けど、今のは藤野さんが悪いからね。そんなに山本くんの話されたら俺嫉妬でどうにかなりそう」

あー、とうなりながら、鎌田くんは机に顔を伏せた。

「藤野さんを困らせるつもりはないんだ」

苦しそうに笑った鎌田くん顔が私の胸を締め付けた。そして、彼はごめんね、ともう一度謝った。

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