今日から君の許嫁!!
「俺なら泣かせたりしないのに」

鎌田くんの言葉はまるで甘い誘惑のようで、彼の腕にすがってしまう。
鎌田くんが求める気持ちを返すことはできないのに、彼のやさしさを求めてしまう。

けど、この温もりは。このやさしさは。
私が欲しいものじゃない。

そう気づいた。

私が欲しいのは彼の温もりじゃない。彼のやさしさじゃない。彼の「好き」じゃない。

私は蓮からの「好き」が欲しいんだ。

「あ、りがと。でも、私蓮じゃなきゃダメみたい。蓮が好きなんだ」
顔を上げて、鎌田くんの目を見て言えた。

彼は静かに頷いて、私の涙を指でそっと拭いた。

「やっと認めたね」と横に花音が立っていた。

さっきはいなかったのに、いつの間に。
花音にはすべてお見通しだったみたいだ。

「賭け、私の勝ちだね」

「賭けって? 」
状況に合わない単語に疑問を浮かべる。

「夏休みに言ってたじゃん。瑞穂が山本くんのこと好きになったら一万円だって」

「記憶力良すぎ」

この状況でお金をねだってくる花音に笑いが止まらなかった。空気を読めているのか、いないのか。よくわからない花音に鎌田くんが呆れていた。

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