今日から君の許嫁!!
何、言われるのかな…。
私は少し緊張した。
それはこの場所のせいなのか
祭りの雰囲気のせいなのかは
わからないけど
私の周りには糸が張り詰めたような
緊張感が漂っていた。
「藤野さん、一応聞くけど
俺の名前わかる?」
私は首を横にふった。
「だよね。
じゃあ、俺が藤野さんのクラスに
通ってた理由は?」
ん?通ってた理由?
友だちとバカやりにきてたんじゃないの?
なんてことを口にはせず、
何も言わずに
首を横にふった。
「俺、藤野さんのこと
見るために行ってたんだよ」
そして、彼は言葉を続けた。
「俺、藤野さんのこと……」
しかし、その言葉は
別の人によって遮られた。
「瑞穂ちゃんっ!」
ぎゅっ。
いや、「がばっ。」
という効果音のほうが適切かもしれない。
私は声の主に
後ろからぎゅっと抱きしめられ、
すぐに放されたと思うと
また声が聞こえた。
「ごめん、
瑞穂ちゃんは俺の許嫁だから
告ったりしたら駄目だよ」
許嫁……。
声の主は蓮だった。
許嫁っていう言葉よりも
声で蓮ってわかったけどね。
私、耳はいいから。
蓮はそれだけ言うと
私に告ろうとしてきた男子を
置いて私の腕を掴んで
歩いていった。